第50章 三色の秘薬(家康・光秀・佐助/微甘)
迦羅の出て行った襖を眺め、ひとつ溜め息を吐く。
たかが眼鏡ひとつに動揺するとは。
やはりあの頭の中身は良くわからないな。
そしてまた眼鏡をかけ直し、途中だった書物に目を落とす。
暫く読み進めた頃、廊下に足音があった。
「光秀様、入りますよ」
「ああ」
やって来たのは三成だ。
数冊の書物を抱え、部屋に入って来る。
「これ、頼まれていたものです」
「わざわざ悪いな」
「今日は眼鏡なんですね、光秀様」
「なぁ三成。眼鏡というのは珍しいものか?」
「はい?」
不思議そうな顔をする三成に、先程迦羅がやって来た時の話をしてやった。
まるで見慣れないものを見たような顔をしていたからな。
「私も同じでしたよ」
「同じ?」
「ええ。以前私が眼鏡をかけたところを見た迦羅様は、それと同じような反応をされましたから」
「ほう…」
「良くわかりませんが、迦羅様は眼鏡にとても反応してしまうようですね」
可笑しいように笑う三成。
俺の眼鏡姿と言うより、眼鏡そのものに反応を示していたと言うことか。
あのようにニヤニヤされたのでは落ち着かなかったが。
それはそれで面白くはないな。
だが人の嗜好というのはわからぬものだ。
…なるほどな。
これでまたからかってやる口実が出来たと言う訳だ。
ん?これは…