第48章 恋の忍びに御用心(猿飛佐助/甘め)
佐助くんに手を引かれてやって来たのは、城下から程近い湖の畔。
前にも来たことがあったけどやっぱり綺麗な所。
暖かい陽射しに湖の水面がキラキラ反射して
疲れとか不安とか、全部が消えちゃうような景色。
「少し座ろうか」
佐助くんは懐から手拭いを取り出して敷いてくれる。こんな気遣いまでしてくれるなんて。
「今日は、何か用事があって来てたの?」
「そうだね、とても大事な用事があったんだ」
「私と一緒に居て大丈夫?用事終わったの?」
「………」
「佐助くん?」
隣に座る佐助くんは前を向いたまま、何か考えているようだった。
「今日は…迦羅さんとこの景色を見たかったんだ」
「…え?私と?」
「うん。とても綺麗だろう」
「大事な用事って…」
「もちろん、迦羅さんに逢いに来たんだ」
あ…笑った…。
こちらを振り向いた佐助くんは、初めて見るような微笑みを浮かべていて…私の胸をきつく締め付けた。
そしてまた懐から何かを取り出すと、掌に乗せたそれを私に見せる。
「これ、似合うと思うんだ。貰ってくれる?」
佐助くんの掌にはトンボ玉で出来た耳飾り。
綺麗な水色の玉には、ハートが描かれている。
…この時代にハートって、ないよね?
「これ、佐助くんの手作りなの?」
「そう。これの意味も、一緒に受け取ってもらえると嬉しいんだけど」
ハートが描かれていて、その意味もって…
もしかして佐助くんも私のことを?
「…やっぱり迷惑だったかな」
僅かに表情を曇らせた佐助くんに、思わず首を横に振った。
「そんなことないよ!すごく嬉しい!」
「えっと、それはつまり…」
「ハートが描いてあるってことは、好きって言う意味があるんでしょ?」
「うん…そうなんだ」
「じゃあやっぱり嬉しいよ」
思いがけない佐助くんからの贈り物に
私はこれ以上ないくらいに胸が騒いだ。
掌の上でキラキラ光っているトンボ玉が、私たちを繋げてくれたんだから。