第48章 恋の忍びに御用心(猿飛佐助/甘め)
ー数日後。
今日は注文の針子仕事もなく、久しぶりに自分の着物でも作ろうかと思って、城下の反物屋さんへ来ていた。
いつ来ても目移りするくらい可愛い反物ばかりで、決めるのに時間がかかってしまったけど、一つの反物を買い店を出た。
城に向かっていると、橋のたもとに見覚えのある姿がー。
「あれっ、佐助くん?」
「やぁ迦羅さん。買い物は終わり?」
「うん。今日も行商に来たの?」
「いや、違うんだ」
いつもと違って何だかそわそわしてるような佐助くん。どうしたのかな?
「迦羅さん、この後もし時間があったら付き合ってくれない?」
「うん、今日は仕事がないし平気だよ」
「それじゃちょうど良かった」
佐助くんの後について城下の通りを歩いていると、人通りが多くて時々前を行く佐助くんと離れてしまう。
「やっぱり人が多いね。こうしよう」
不意に繋がれた手が大きくて温かくて…
初めて触れる佐助くんの掌に、鼓動が一つ、高鳴った。
「ありがとう佐助くん」
「あ、手を繋ぐの嫌じゃない?」
「うん」
嫌じゃないよ。
本当はずっと前から、触れてみたいと思ってた。
佐助くんと一緒にこの時代に来て、不安なこともあったけど、いつでも佐助くんが心配して来てくれた。
最初はそれが安心するだけだったけど
いつの間にか…違う感情に変わっていったの。
親切にしてくれる佐助くんとの関係がおかしなものになるかもしれなくて、ずっと言えなかったけど…。
「もう少しだけ歩くよ」
「うん」
時々振り向いては私を気遣ってくれる佐助くん。
相変わらず無表情だけど、いつか一番近くで、その笑顔を見たいと思ってるんだよ。
こんな気持ちを知ったら…迷惑だと思うかな?
優しく包み込む手から伝わる体温と頼り甲斐のある背中。
人混みの中でも、私にはそれしか見えないみたい。