第48章 恋の忍びに御用心(猿飛佐助/甘め)
「なぁ、何で急に行商なんて言い出したんだよ」
隣でぶつくさ言っている幸村を他所に
俺は今日も迦羅さんに逢えると思うと、胸がひとりでに晴れ晴れとしていた。
「なぁ佐助、聞いてんのか?」
「情報収集も大事な仕事だからね」
「そうだけどよー」
いつもの場所に露店を広げていると、通りの向こうから見慣れた姿。
陽の光に照らされたその人は、今日も変わらず可愛らしく輝いていた。
「佐助くーん!」
少し離れた所から手を振る迦羅さん。
まるで待ち合わせをする恋人のようで、俺は勝手に舞い上がる気持ちをぐっと堪えた。
「やあ迦羅さん、来てくれたんだね」
「うん。こんにちは、幸村」
「何だよお前かよ」
つれない声を出す幸村の足をきつく踏んづけた。
「いてっ!!」
「どうしたの?」
「幸村も迦羅さんに逢えて嬉しいんだよ」
「…何勝手なこと言ってんだよ」
「あんまり嬉しくはなさそうだね」
「幸村は照れ屋さんだからね」
「お前なーさっきから聞いてりゃ…」
おい、真田幸村。
それ以上余計な口を利くと、わかってるね?
「…何なんだよ」
眼鏡の奥を光らせながら幸村を横目で見ると、圧に押された幸村は口をつぐんだ。
「今日も綺麗な飾りがいっぱいだねー」
「信玄様の趣味だから、悪くないだろう?」
「うん。凄く綺麗なのばっかり!」
髪飾りや耳飾りなど、女性ものの品ばかり。
でも、どれも迦羅さんに似合うと思うんだ。
目を輝かせながらそれらを見る迦羅さん。
俺は、この綺麗な飾りなんかよりも、迦羅さんのほうがよっぽど綺麗だと思うよ。
…なんて声に出して言ってみたいものだね。
飾りに夢中になっている迦羅さんの傍で、幸村が俺に耳打ちする。
「もしかしてお前の目的って、こいつか?」
「さあどうだろうね」
「ったく…」
悪いね幸村。
今日は君のお陰でこうして迦羅さんに逢えたんだ。
ダシに使わせてもらって感謝しているよ。