第46章 悪戯な恋文(真田幸村/甘め)
「ったく、呑ませ過ぎだろ」
「幸村、大丈夫?」
謙信様に散々とお酒を呑まされた幸村は、ふらふらとする足元で歩き、それを私が支えている。
「無理して呑まなくていいのに…」
「断って、はいそうですかって言うと思うか?」
「…それはないね」
「だろ?」
部屋に着き、幸村は欠伸を噛み殺し、眠そうな顔をみせる。
「私が布団敷くから待ってて」
テキパキと布団を敷いている私の側で、幸村は立ったまま重い瞼と戦っていた。ふふっ、何か可愛い。
「はい、横になっていいよ幸村」
またふらふらとした足取りでこちらへ向かって来ると、布団には入らずにそのまま私をふわりと抱きしめる。
「…まだ寝ない」
「え、でも…眠そうだよ?」
「やっとお前と二人になったんだ」
「幸村…」
お酒が入って熱を帯びた幸村の吐息が耳にかかって、私の熱まで一気に上昇していく…
「迦羅…」
いつもの真剣な瞳を間近に覗けば、そこには私が映っているー。
「迦羅、好きだ」
「…私も好き」
幸村から重ねられた唇が甘く、絡ませる舌はお酒の味がする…
お互いの唇を何度も求め合ううちに
幸村の手が、私の襟元に触れたー。
…あっ…
その瞬間、懐に入れたままの文を思い出す。
「んっ、幸村…待って…!」
「嫌なのかよ」
「違うの、そうじゃなくて…」
言っているうちに幸村の手はあの文を探り当てていた。
「…何だよこの文」
「そ、それはっ」
「男にもらったのか?」
疑うような声を出されて、胸がチクリと傷んだ。
「これは…幸村に渡して欲しいって、預かってきたの」
「俺に?」
「…うん。今日会ってた友達から」
「………」
文を手にした幸村は何を思っているんだろう。
この沈黙が、堪らなく怖い。
「お前、何でこんなの預かって…」
「ちゃんと読んであげて!…お願い」
それだけを言うのがやっとで、私は逃げるように幸村の元を離れた。今日は自分の部屋に戻ろう。
「おい待てよ迦羅っー」
もし文を読まなかったら
幸村は楓ちゃんの恋心なんか一生知らないまま。
必死に想いを巡らせて書いた文を、読んでも貰えないなんてあんまりだもの…。
本当は恋文なんて渡したくなかった。
ごめん…幸村…