第45章 飴と鞭と甘い罰(織田信長/甘め)
天主を出た私は、深く溜め息をつく。
はぁ…
何か納得いかないけど、お仕置きなんて…。
何とか今日一日、秀吉さんをやり過ごそう…。
とは言っても、もし顔を合わせて挨拶もしなかったら変に思われるよね。
…ということは、なるべく顔を合わせなくて済むように篭っていれば!
よし!針子部屋に行って、次の仕立てに入っちゃおう!
「お、迦羅」
「わっっ!?」
角を曲がった所で早速秀吉さんに会ってしまう。
「信長様に会って来たのか?」
「う、うん、そうなの」
意識しないと秀吉さんと呼んでしまいそうで、いつも通りの返事が出来ない。
「どうしたんだ?」
あー!秀吉さん!
お願いだから今日は何も言わないで!!
「大丈夫か?」
「私は大丈夫だから!気にしないで秀よ…ああっ!」
「おいおい落ち着けよ」
「じゃあまたね!」
下手に喋る前に慌てて逃げ出した。
秀吉さんて名前を呼べないだけで、こんなに苦労するとは…。
一体何を考えてるの信長様〜!
針子部屋に駆け込みむと、安心から盛大な溜め息が出る。
「あら、迦羅様。今日お仕立てありましたか?」
「じ、時間が空いたのでやってしまおうかと!」
「あまり無理なさらないで下さいね」
「うん、ありがとう」
此処でこうしていたら、あっと言う間に時間が過ぎてくれる。
よし!仕事しよう。
ーそうして布に針を通していく間、刻々と時は過ぎて陽が暮れた。
針子仲間たちはそれぞれのきりのいいところで部屋を後にし、最後に私だけが残っていた。
「…そろそろ止めようかな」
疲れもあって、縫いかけの着物を畳み、道具を仕舞う。
ガラッー
「迦羅、終わったか?」
現れたのは秀吉さんだった。
「あ、秀……あああっ!」
「な、何だよ?」
「ううん!何でもない!」
だめだめだめっ!
不意をついて現れないで秀吉さん!
隙間を縫って部屋から出ようとしたけど
咄嗟に腕を掴まれて、結局秀吉さんと二人で部屋を出た。
一緒に夕餉だと言われ、広間に連れて行かれた。
もう、疲れたよ…私。