第43章 雨のち晴れ(徳川家康/甘々)
「ねぇ、家康」
「何?」
「さっき、やきもち妬いたの?」
「…当たり前でしょ」
「そっか。嬉しいな」
私の膝の上に、私を見上げる格好で頭を預ける家康。
膝枕なんて、初めてだよね。
こんな風におねだりすること、無かったのに。
「迦羅は、良かったの?」
「何が?」
「あの二人、性格は悪いけど、男前でしょ」
「ふふっ、何それ」
「あの二人より、俺がいいの?」
「私は家康じゃなきゃ駄目なの」
「…そう」
本当は嬉しいくせに、嬉しいって言わないんだから。
「一番男前なの、家康だと思うけど?」
「…やめてよね」
照れ隠しなのか、急に身体の向きを変えて、私のお腹にギューっと顔を押し付ける家康。
ふふっ、そういうとこは素直なの。
いつもこうだったらいいのに。
私にしか見せない、素直で可愛い家康。
そんなの、ますます好きになっちゃうよ?
あ、そう言えば……
「まだ聞いてないな」
「は?」
「昨日言ってくれた言葉」
「昨日って…」
思い出したようにガバッと起き上がる家康。
そして睨むように私を見た。
「もしかして、起きてたの?」
「あんなにブツブツ言われたら起きるよ」
「…なら、起きたって言ってよね」
「良く覚えてないから、もう一回言って?」
「嘘つき…」
恥ずかしそうに頬を染める家康。
それが堪らなく可愛くて、愛おしい。
「…言ってよ」
着物の袖を引っ張ってみると、言葉より先に口付けが与えられた。
いつもより甘くて優しい、家康の口付けー。
「言ってあげる。これが終わったら、ね」
意地悪な笑顔を見せた家康は、蕩けるような口付けを繰り返しながら、私の身体を押し倒す。
「今日は、全部、言ってあげる」
「今日だけ?」
「明日も明後日も、ずっと、言ってあげる」
「約束だからね」
「うん、約束…」
この人は、天邪鬼な困った人。
でも、それだけじゃないって知ってる。
だから私は、この人を愛せるんだと思う。
明日はもっと好きになる。
明後日はもっと、好きになる。
不安になることもあるけど、それを拭ってくれるくらい、甘くて仕方ない気持ちをくれるから。
「ねぇ迦羅、愛してるって、言ってよ」
「愛してるよ、家康」
「俺も…愛してる」