第43章 雨のち晴れ(徳川家康/甘々)
痛いくらいに手首を掴まれ、黙ったままの家康に引っ張られて、私の部屋に辿り着いた。
後手に襖を閉めた家康は、まだこの手を離さない。
「…家康?」
何だか様子がおかしくて、伺うような声になってしまう。
それに…私の手首を掴む家康の手は、きつく力を込めていた。
「家康、痛いよ…」
そう言うと同時に強く手首を引かれ
気付けば家康の胸にギュッと閉じ込められていた。
「何なの」
「…え?」
「あんたは、俺のでしょ」
確かめるような、言い聞かせるような、家康の声。
耳元に触れるその声が微かに震えている。
「…そうだよ」
そうに決まってるじゃない。
私には、家康しか居ないんだよ?
その背中に手を回して想いを伝えた。
「家康は…私のこと好きなの?」
「……うん」
「ちゃんと言ってくれなきゃ、わかんないよ」
疑ってるわけじゃないの。
ただ、家康の言葉が、天邪鬼なだけなのか…本当はそうじゃないのか、不安になるだけなの。
「俺は…」
「うん」
「あんたのこと、大好きなんだ」
「うん」
「すごく、好きなんだ」
少しだけ身体を離して家康の顔を覗き込むと、その顔は赤くなって、嘘じゃないよって言ってくれてる…。
私、今すごく幸せだよ、家康。
じっと顔を見つめていると
コツンと額を重ね合わされて、家康の吐息を間近に感じる。
「そんなに、見ないでよね」
「どうして照れるの?」
「俺を見てるあんたの顔、可愛いから」
「…っ!?」
急激に頬が熱くなるのがわかった。
そんなこと言われたら…私のほうが照れるよ…
思わず顔を背けようとするけど
家康の両手が、私の頬を包んでそれを拒んだ。
「どうして、照れるの?」
「い、家康が…そんなこと言うからでしょ」
「何回でも言ってあげる」
「いいよ、恥ずかしいから…」
「迦羅は、すごく可愛い。だから、ずっと、俺だけを見てて」
絡まり合う視線に胸がうるさく騒いで…
私はもう、目の前の家康しか見えない。
「私はいつだって、家康しか見てないよ」
満足そうに微笑んだ家康の顔がゆっくりと近付き、お互いの想いを伝えるような甘い口付けを交わしたー。