第43章 雨のち晴れ(徳川家康/甘々)
ー翌日・午前ー
昨日は結局、眠った迦羅にしか逢えなかった。
だから、すごく逢いたい。
珍しく素直に自分の気持ちと向き合い、仕事の合間にその姿を探した。
針子部屋には居ないか…
部屋に向かってみると、その縁側に座っている迦羅を見つけた。傍には、信長様ー。
自然と足が止まる。
「この間の羽織、なかなか見事なものだった」
「本当ですか?良かったです」
「ああ。また貴様に仕立ててもらおう」
「はい!」
嬉しそうに笑顔を見せる迦羅。
その頬に信長様が手を伸ばし、柔らかく触れた。
ー!!?
何してるの?
…気安く、迦羅に触らないでよ。
「迦羅。貴様、本当に家康でいいのか?」
「…えっ?」
「あいつの側に居て、笑っていられるか?」
「それは…」
「俺ならば貴様にそんな顔はさせない」
「信長様…」
………どういうことなの。
信長様は、迦羅のこと、好きなの?
迦羅は…それに応えるの?
聞きたいけど、聞きたくない。
もしも迦羅が
信長様を選んだとしたら…俺はどうするの?
込み上げる不安や焦り、怒りが入り混じって、胸の奥は痛いくらいに悲鳴をあげ始める。
「……っ」
陰から足早に去るその家康の姿を
信長は視界の端に映していたー。