第43章 雨のち晴れ(徳川家康/甘々)
パシャッ、パシャッ、パシャッ。
雨の中を家康と二人、一つの傘をさして歩く。
私を庇うようにさしている傘から家康の身体がはみ出て、その肩を雨が濡らしていた。
「家康、濡れちゃってるよ」
「別にいい。あんたに風邪ひかれるほうが、よっぽど面倒だし」
「ごめん…」
何だかな。
家康のこういう言葉にも慣れたと思ってたけど…
慣れたつもりだったのかな。
意地悪で言ってるんじゃないのはわかってる。
けど…棘の有る言葉に、時々胸が痛くなる。
チラリと伺う家康の横顔ー。
何にも感じ取れなくて、それ以上は無駄に声を掛けるのを止めてただ歩いた。
城へ着き、傘を畳む家康に御礼を告げる。
「迎えに来てくれてありがとう」
「次は、行かないからね」
「…うん」
「ちゃんと、着替えなよ」
気遣ってくれる言葉とは裏腹に、にこりともせずにさっさと行ってしまう家康の背中を見送っていると、何だか寂しい気持ちが溢れ返ってきた。
私って…やっぱり面倒なのかな?
家康にとっての私って…。
ううん、そんなことばかり考えてちゃ駄目だよね。
沈んでいく気持ちに蓋をして、裾の濡れた着物を替えようと私は部屋へと向かった。