第41章 戀−koi−(豊臣秀吉/甘々)
あーあ、結局今日は迦羅を他所へ連れて行ってやれなかったな。
大丈夫だって言うが、毎回これじゃあ可哀想だよな…。
我慢させてることもたくさんあるだろうな。
「ねぇ秀吉さん?いつものとこ行っていい?」
「ああ、構わない」
迦羅が俺の手を引き、馴染みの反物屋に向かう。
迦羅が真剣に反物を選んでいる間に、俺はそっと隣の小物屋を覗いて、迦羅に似合いそうなものを探した。
特別なことはしてやれないが
迦羅の笑顔を見たいんだ。
迦羅に気付かれないうちに、髪飾りを一つ買う。
何事も無かったように迦羅の隣へ戻ると、丁度俺に声を掛けるところだったようだ。
「秀吉さん、こっちとこっち、どっちがいいかなぁ?」
「誰の着物作るんだ?」
「んー、内緒!…やっぱりこれにするね!」
そうやってお前はいつも俺の好きな色を選ぶんだよな。
隠してるつもりなんだろうがバレバレだぞ?
迦羅の手から反物をひょいっと取り上げて会計を済ます。
悪いよ、とか言うんだろうが俺は…
「ありがとう秀吉さん」
…あー、何でそういう顔するんだ。
俺はお前のその顔に弱いんだ。
勝手に頬が赤くなるのを感じながら、迦羅の手を掴み次へむかう。
今日はあんまり時間が無いからな。
ずんずんと歩みを進めてやって来たのは
最近出来たばかりの甘味処。
女の子たちの間では流行ってるらしいんだ。
俺はあんまり甘いものは得意じゃないが、迦羅はきっと好きだろうな。
外の縁台に二人並び、迦羅は美味しそうにあんみつを頬張る。
そんなにニコニコして…よっぽど美味いのか?
「秀吉さんも少し食べない?」
掬った匙を差し出した迦羅の笑顔にまた癒される気がした。
いつも、何度見ても飽きないその笑顔。
お前が隣に居る限り、俺は一生幸せでいられるんだろうな…。
「ここに付いてるぞ?」
「えっ?どこどこ?」
慌てて口元を探る迦羅の手首をやんわりと掴み、何も付いてはいない唇を奪う。あんみつのせいで一層甘い…迦羅の唇。
「ほら…取れた」
俺の好きな、真っ赤になった可愛い顔。
照れてるくせに、嬉しそうなー。