第39章 戦国狂想曲1幕②(謙信ルート)
未だに迦羅から手を離せないまま聞いた。
「お前の返事を、聞かせてくれるのか」
「はい」
一呼吸おくと、迦羅は自分の頬に添えられた俺の手に、自分の手を重ねる。
「私は、謙信様が好きです」
「…それは本当か?」
「はい。ずっと前から、私は謙信様を…」
そこまで言って、恥ずかしそうに顔を伏せた。
そんな姿もまた愛おしい。
「それを聞いて安心した」
「謙信様が、私を愛していると言ってくれて…どうしても私の気持ちも伝えたくなって…」
「戦と結婚しろと言われた時は傷付いたぞ」
「なっ、あれは口が勝手にっ…!」
「ふっ、冗談だ」
笑ってみせると迦羅も安心したように微笑む。
こんな時間が妙に心地良いものだ。
他愛のない話をし、笑っているだけなのだが…。
恐らくこれが、俺が手にしたことのない幸せと言うものなのだろう。
それを素直に感じるのも、迦羅、お前が居るからだ。
迦羅はすぐ隣に居る。
だが、この僅かに空いた距離がもどかしい、
「もっとこっちへ来い」
戸惑いながらも迦羅は素直に身体を寄せる。
肩と肩が触れ合い、それだけで温かな気持ちになった。
触れ合っている迦羅の肩が、まだ微かに震えていることに気付いた。
「まだ、寒いか?」
「このくらい平気です。…謙信様が温かいから」
トクン…
…お前のひと言ひと言が、俺を無性に掻き立てていく。
「あっ…」
俺はこの気持ちに逆らうことなく
迦羅の肩に腕を回して引き寄せた。
「俺は、どうも抑制の効かぬ男だ」
「…え?」
「お前が欲しいがため、安土まで乗り込む程に」
「ふふっ、そうですね」
可笑しそうに笑う迦羅は、緊張が解けたようだ。
「俺は今すでに、お前の身も心も欲しくて堪らないのだ」
「…私は構いません。謙信様になら…」
…何を言っているかわかっているのか?
俺はすでにお前への愛欲に塗れているのだぞ。
もう今宵はこの手を、離してはやれぬだろう。
「迦羅、このまま俺にすべてを委ねるか?」