第37章 戦国狂想曲1幕(信長VS謙信/共通)
しばらくの沈黙が過ぎた頃ー
チラリとこちらを見た二人と視線が合った。
「迦羅、お前を迎えに来たぞ」
柔らかく微笑む謙信様が言う。
「私を、迎えに?」
「そうだ、俺はお前に心底惚れている。迦羅、お前の全てを俺に捧げろ」
ードキン
見たことのないような謙信様の優しい笑顔。
意識せずに鼓動が跳ね上がった。
「迦羅、貴様は俺だけのものだ」
今度は勝気な笑みを浮かべた信長様が言う。
「俺は貴様を一生離してはやらん。…愛している、迦羅」
「信長様…」
場違いなまでの愛の告白。
頭が真っ白になりそうなくらい、胸が苦しい…。
「迦羅様はあの二人を手玉にとっておられるのか」
「やはり底知れぬお方だと思ってはいたが…」
「いや、あれだけの器量だ、納得もできよう」
ヒソヒソと離す家臣の声が聞こえ、慌てて冷静さを取り戻した。
だ、だめだめ!キュンとしてる場合じゃない!
二人が刀を交えたらただじゃ済まない。
何とかやめさせなくちゃ…
「いざー」
ガキィィィンッ
謙信様が振り下ろした刀を信長様が受けている。
受けた刃を薙ぎ払い、今度は信長様が踏み込む。
交える刃は互いの身体に触れることなく
無機質な高音を響かせ、軽やかに一進一退を繰り返していた。
「ちょ、ちょっと二人ともやめて下さい!」
「邪魔をするな。貴様を賭けた勝負なのだ」
「ああ、お前を手に入れるか失うか、この勝負にかかっている」
何を言ってるの二人とも…
それじゃあまるで…私の意志は完全に無視されてるってこと?
こんな馬鹿げた勝負しなくたって私は…
私が好きなのはー
置いてきぼりの私の気持ち…
「…何なのよ」
沸沸と怒りが込み上げてきた。