第33章 いつか貴方と永遠を(織田信長/甘め)
「皆、気を付けて帰るんだよ」
「うん!ありがとう迦羅様〜」
「また明日ね」
茶屋の店先で、教室を終えた迦羅が子供達を見送っている。
子供達が帰っていき、振り向いた迦羅と目が合う。
「信長様っ!!」
目を見開いて嬉しそうに駆け寄ってくる姿に、堪らない愛しさが湧く。
「どうしたんですか?」
「貴様を迎えに来てやったのだ」
その瞬間、迦羅は更に花が咲いたような笑みを零す。
これを幸せと言わず何と言うのか。
その答えは恐らく、俺には浮かばん。
「何だか…とっても嬉しいです」
「何だ?」
「こうして迎えに来てくれるなんて」
「そうか」
ああ、知っている。
貴様はいつでも、こういうささやかなことに胸を鳴らすのだと。
俺はいつでも先ばかりを見ていた。
激動のこの世の先にある、俺が作っていく遥か未来をー。
だが、それも違うのかもしれん。
城へ続く道。
温かな陽の中を迦羅と歩く。
片方の手を懐に突っ込み
片方の手で貴様の小さな手を握って。
「信長様?」
「どうした」
「私、幸せです」
「幸せでなければ俺が困る」
互いを見つめ笑い合う二人の間を
撫でるような風が通り抜けるー。
…なるほど。
未来など、その時が来れば見られる。
今は貴様と歩いてゆくこの足下を、見ていれば良いのだ。