第33章 いつか貴方と永遠を(織田信長/甘め)
「では各々引き続き任務にあたれ」
「はっ!」
予定よりも早く終わったな。
やらなければならないことは山程あるが…
もう一つやることが出来た。
裁縫教室とやらは陽が高いうちに終わると聞いている。
いつも俺を出迎えてばかりの迦羅を、今日は俺が迎えに行ってやるか…。
足早に広間を出ようとすると、秀吉の声がかかる。
「信長様、どちらへ?」
「野暮用だ」
城からまっすぐやって来たのは城下の茶屋。
確か、茶屋の一室を借りていると迦羅が言っていたからな。
「いらっしゃい!…っあ!」
店主と女房は、縁台に腰を下ろす俺の姿を見るや畏まっている。
「信長様!」
「そんなに畏まることはない。茶を頼む」
そう言うと、緊張を解いた二人は商売人の笑顔を浮かべ、中へ戻っていく。
すると、奥のほうから声が漏れ聞こえてきた。
子供達の笑い声と、聞き慣れた迦羅の声。
「お待ちどうさまです」
「随分と賑やかなようだな」
「ええ、迦羅様が子供達に裁縫を教えて下さってるんですよ」
茶を運んで来た女房が嬉しそうに奥へと顔を向けると、また楽しそうな声が響く。
「皆迦羅様によく懐いてましてねぇ。間もなく終わると思いますが、覗いていかれますか?」
「いや、ここで待つ」
そうですか、と微笑む女房は頭を下げ戻っていった。
俺と迦羅の仲は今や城下の間に知れているからな。
耳に入る賑やかな声も不思議と心地良い。
愛しい女を迎えに出向くとは…
この俺も、随分と甘くなったものだ。