第33章 いつか貴方と永遠を(織田信長/甘め)
「裁縫教室?」
「はい。城下の女の子たちに教えるんです」
なるほど。
最近やけに出掛けて行くと思ったら、そう言うことか。
朝の天主で着替えを手伝う迦羅からの報告。
確かに迦羅の針子の腕はいい。
子供達のためにと引き受けたのだろう。
「念のために聞いておくが」
「はい」
「男は居ないのだろうな?」
「えぇっ?」
間を置いて、迦羅がくすくすと笑い出した。
「何故笑う?」
「だって信長様が…ふふっ」
ひと息つくと言葉を続ける。
「聞いてましたか?女の子たちに教えているんです」
「わからんではないか。貴様目当てに男が来るかもしれないだろう」
「もう、変な心配しないで下さい」
貴様が如何に俺に惚れているかは知っている。
最初から心配などしているわけではない、念のためと言っただろう。
背後から羽織を俺の肩に掛け、迦羅がそのまま抱き付く。
「これでは顔が見えんな」
「いいです…きっと赤いから」
自ら抱き付いていると言うのに、頬を染めるか。
可笑しなものだが…慣れずとも良い。
恥じらう貴様の姿は実に愛らしいからな。
だがやはりその顔が見たい。
「おい、苦しいぞ」
「あ、ごめんなさい!」
迦羅が手を離した隙をみて振り向き、向かい合わせに抱き上げる。
「きゃっ…!お、降ろして下さい!」
「断る」
迦羅を見上げる形で向かい合うと
確かにその頬が赤らんでいた。
いくら見ても飽きることがないな。
「あの、そんなに見られると…」
顔を背けながらますます頬を染めていく迦羅が可愛くて、更に意地悪をしたくなった。
「行ってらっしゃいの口付けをしろ」
「そんなの、恥ずかしいです!」
「もっと恥ずかしいことをするではないか」
「…もうっ!意地悪!」
背けられた顔はどこか楽しそうに笑っている。
こうして戯れあう今が、貴様にとって幸せな時であればいい。
「こちらを向け」
観念した迦羅が顔を向け、目が合えばまた照れくさそうに笑った。
コツンと額が合わさる。
迦羅の柔らかな唇を奪えば、甘い感覚に酔っていく。
離れ難い唇をようやく離し、微笑み合う。
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」