第32章 君に甘えたくて(徳川家康/甘め)
頭を撫でられる感触に目が覚める。
「家康?」
そっと顔を上げると、目を閉じたままの家康が優しく頭を撫でてくれていた。
いつも通り、私が家康の胸に抱かれている。
「おはよ」
昨日とは違い顔色が戻っていた。
良かった、治ったみたい。
安心していつもの顔を見つめていると…
「何?口付け、してほしいの?」
「ち、違うよっ」
それはいつもの家康の口振り。
やっぱり昨日のあれは…熱のせいだったのかな。
「ねぇ、昨日のこと覚えてる?」
「迦羅に変な薬飲まされたとこまでは」
「あれは光秀さんのだよ!」
そっか、覚えてないか。
何だかちょっと残念だな、あんなにドキドキしたのに。
「昨日、何かあったの」
「ううん。別に」
家康が覚えてなくてもいいか。
私は多分、あの可愛い家康を忘れないから。
「何ニヤニヤしてるの」
「してないもん」
「してるから、お仕置き」
覆い被さってくる家康から、甘いお仕置きー。
甘えてくれる家康も、甘やかしてくれる家康も、どっちも大好き。
家康と一緒に城に着くとすぐ、私は秀吉さんに呼ばれた。
「昨日は何ともなかったか?」
「あ、家康なら少し熱が出たみたいだけど、今朝はすっかり良くなったよ」
「いや、そうじゃなくて…」
何かを言い淀む秀吉さん。
「実はさ…」