第4章 嘘の代償(豊臣秀吉/甘め)
城へ戻ると、秀吉さんは私の部屋まで荷物を運んでくれた。
「針子仕事もいいが、ちゃんと身体も休めろよ」
優しく言うとポンポンと私の頭を撫でる。
くすぐったくて、嬉しいけど、何故か今はうまく笑えない…。
「どうした?」
「…ううん、何でもないよ」
笑ってみせるけど、きっとぎこちない笑顔なんだと思う。
「本当に大丈夫か?」
私の顔を覗き込み、心配そうな視線が絡む。
妙に胸が傷んで咄嗟に秀吉さんの胸をドン!と押した。
突然のことに秀吉さんはキョトンとしている。
「大丈夫だから!今日はありがとう!」
言うだけ言ってすかさず襖を閉める。
「どうしたんだ…?」
襖の向こうから小さく呟く秀吉さんの声が聞こえた。
そして秀吉さんが去っていく足音を確認してから、私はその場に座り込んだ。
ほろり、と雫が流れる。
何でだろう。
こんなに面倒みてもらって、優しくしてもらって、そばに居てくれて…どうしてそれで満足できないんだろう。
その先を求めてしまったら、どうなるかわからないのに。
溢れてくる想いに歯止めがきかなくなって
気付けば涙が止まらなくなっていた。
ーひとしきり泣いたあと、反物を広げて縫い物に集中していた。
注文を受けたものは既に作り終えていたけれど、何かに集中していないと自分が保てないような気がするから。
次第に夜は更けて静けさに包まれた。
行燈の灯りの下、私は眠れそうもなく縫い物を続けた…。