第4章 嘘の代償(豊臣秀吉/甘め)
城下で新しい反物を幾つか仕入れた。
道行く人も顔見知りが増え、精が出るね、なんて声をかけてくれる。
この国に馴染めた実感が湧き、嬉しくなる。
今日の買い出しも、いつも通り秀吉さんが付き添ってくれた。
極自然に荷物を持ちながら隣を歩いてくれる。
「いつもありがとう」
今まで何度も告げたけれど、今日も明日も、きっと感謝の気持ちでいっぱいになる。
「礼なんかいいんだよ、生粋の世話焼きだぞ?」
そう言って秀吉さんが笑う。
この何気ないやり取りも、私の大事な時間。
「あら、秀吉様よ!」
町の娘達が黄色い声を出してわらわらと寄ってくる。
この光景も見慣れたものだけれど、やきもきした気持ちは一向に慣れてはくれないー。
「秀吉様はいつも妹さんの面倒ばかりみているのね」
「たまには私達ともお茶して下さらないのー?」
この人達は、私が安土城で預かられていることを知っている。
秀吉さんが妹のようなものだと言って接していることも。
だから、下手な嫌味を言ってくることもない。
秀吉さんはいつも通りに取り巻く女達に声をかけている。
面倒だとか、嫌だとか、そんな顔はしていない。
誰に対しても、まるで兄でもあるかのような優しい態度…
そういうところが皆を惹きつけるんだろうな…。
「迦羅、…迦羅って」
名前を呼ばれハッとする。
「ぼーっとしてないで、ほら行くぞ」
また笑って歩き出す。
隣にいるのにこんなに遠く感じるなんて。
いつの間に…自分がこんなに欲張りになってしまったのか、そんなことを考えながら城まで歩いた。