第29章 照れ屋な彼と林檎飴(真田幸村/甘め)
何だか心地良い疲れを感じた私達は、馴染みのお茶屋さんで一息いれていた。
外の長椅子に座り、夕陽を眺める。
「疲れたか?」
「ちょっとだけね。でも大丈夫だよ」
「悪かったな、あいつに付き合わせて」
「私は楽しかったよ?妹が出来たみたいで」
嵐のように過ぎた春ちゃんとの時間を思い出し、笑みが浮かぶ。
確かに、幸村と二人の時間は少なくなっちゃったけど、今こうして二人で居るし…
楽しかったのは本当。
「俺は早く二人に…」
何かを言いかけた幸村だったけど、何故かすぐに話を変えた。
「えーっと、この後どうする?」
うーん…
お祭りは春ちゃんと一緒にほとんど見て回っちゃったし…
まだ幸村と二人で居たいけど
あんまり帰りが遅くなってもダメだよね。
「暗くなってきたから、そろそろ…」
帰ろうか、そう言いかけたけど、言葉が被せられた。
「やっぱ聞くのやめた」
「??」
ぽん、と頭に手が乗せられて…
「俺はまだ帰りたくない」
最早沈んでいく夕陽に照らされた幸村の頬は、また一段と紅くなっている。
私の返事を待つ真剣な瞳に、吸い込まれそうだった。
「…私も、まだ二人で居たい」
「じゃあ、決まりだな」
安心したように優しく緩む顔に、意識せず心臓が音を立て始める。
前から思っていたけど
きっと私、幸村に恋をする運命だったんだ。