第28章 夜の姫はご乱心!?③(光秀ルート)
困ったものだ。
慣れない酒をそう吞むものではないだろう。
…煽ったのは俺だがな。
次第に紅潮していく迦羅の横顔を眺めながら、いつの間にか口元が緩んでしまうのを感じていた。
普段言葉にはしないが…
俺は心底お前を愛しいと思う。
お前が俺を思う以上にな。
ー気付けば、熱を帯びた頬に手を伸ばしていた。
片方の頬を包みこちらを向かせる。
如何に酒を呑んだか良くわかるほど赤く、熱い。
「もうその辺にしておけ」
「…そうですね」
迦羅は素直に従い盃を膳に戻す。
無理をして呑んでいたのか、盃を置いた瞬間ほっとしたように短いため息をついた。
何故だ、俺は迦羅の頬を包む手を離せずにいる。
…なるほど
一度触れてしまえば手離せなくなると知っているからこそ
今までこの手を伸ばせずにいたか。
我ながら可笑しなものだ。
「あの、光秀さん?」
「なんだ」
「ええっと…そろそろ、手を…」
「嫌なのか?」
その問いかけに、迦羅は小さく首を横に振った。
俺は迦羅の頭を引き寄せて耳元に囁く。
「御殿に来るか」
「ーー!!」
そして少しの間をおいて、迦羅が小さく頷いた。
それがいつものからかいであれば良いものを。
俺の強がりも今日まで、か…。
お開きになった宴会の後、城から御殿への道を辿る。
酔っている迦羅の歩幅に合わせ、初めてその温かく柔らかな手を引いていたー。