第28章 夜の姫はご乱心!?③(光秀ルート)
信長様と秀吉さんに挟まれながら、他愛もない話をして楽しい宴会の時間は過ぎていく。
すでにほろ酔いの私は、あまり呑み過ぎてはいけないと思い、二人のお酌に徹していた。
「しかし、宴会の席に光秀が居るのは久しぶりですね」
「あれはわからぬ男よ」
二人のそんな会話を聞き、ふと光秀さんのほうに視線を向ける。
他の皆のように、お喋りをしながら楽しく…とはいかないものの、薄笑みを浮かべてゆったりとお酒を吞む姿は、それなりに宴会の雰囲気を楽しんでいるように見えた。
「ちょっと失礼します」
信長様に一言告げ、光秀さんのもとへ向かう。
一人吞む光秀さんの隣へ座ると、手に持つ盃は空になっていた。
「どうぞ」
「ああ」
私の手からお酒が注がれると、盃を傾け一気に呑み干す。
強いお酒らしいけど、その顔には何の変化もなかった。
「お前は呑まないのか?」
「もう、少し酔ってるので…」
「確か、人肌が恋しくなるんだったな」
可笑しそうに笑う光秀さんに、先程自分が言った言葉を思い出して途端に顔が熱くなった。
「み、光秀さんが変なこと聞くからでしょ!」
「お前が勝手に答えたんだろう?」
自分でも何であんなこと言ったのかわからないのに。
でも、あまり意識せずに出た言葉ってことは、多分…本音なんだと思うけど。
「…おい」
目の前に光秀さんの長い睫毛が迫り、視線が絡まる。
「その姿を、俺に見せてみるか」
笑みが消えた真剣な表現を見せる光秀さんに、トクンと鼓動が跳ね上がる。
「えっ…」
でも、一瞬のうちに普段の意地の悪い薄笑みが戻る。
またからかわれた!?
ほんと…人の気も知らないで…。
心の中でぶつくさ呟きながら、光秀さんの盃を取り上げた。
「私も呑みます!」
盃を持つ手をグイッと差し出すと、呆れたように笑いながらお酌をしてくれる。
悔しいけど…
私はこんな光秀さんのことが、好きで堪らなかった。