第24章 満月と狼と(徳川家康/甘々)
迦羅の身体を抱きしめていると、何か安心する…。
温かさとか、鼓動とか、見えないものが心地良い。
どれだけ疲れていても嫌なことがあっても、帰ってきたって思える。
それに…迦羅の微かな甘い匂い…
ん…?
何かいつもと違う匂いがする?
迦羅の甘いそれとは別の。
何だろう。
どこかで覚えがあるようなこの感じ。
「ねえ、今日は何してたの」
「いつも通りだよ。針子仕事してた」
「うん」
「あとは、夕餉の仕度と片付けと」
「うん」
「あ、帰る前に信長様に呼ばれて…」
信長様?
そうだ。この微かな匂い…
「呼ばれて、何?」
聞きながらも胸がモヤモヤしていく。
迦羅は俺のでしょ。
どうして信長様の匂いなんかさせてるの。
…嫌。
「信長様に呼ばれて、囲碁の相手を…」
迦羅の答えを聞きながらも、髪を掬いあげて晒されたうなじに唇を当てる。
「それだけ?」
俺の吐息がかかり、迦羅は小さく肩を震わせた。
「本当は、もっと、いいことしてたんじゃないの」
「なっ、いいことって…」
こちらを振り向いた迦羅の顔は、言葉の意味を理解してか少しだけ赤く染まっている。
こんな可愛い顔、他の男に見せるなんて許さない。
顎を捕らえ、艶やかな唇にゆっくりと近付く。
「例えば、こういうこととか」
唇を塞ぎ、容赦なく舌を絡めていくと、ひどく色っぽい吐息が迦羅の唇の端から漏れ聞こえる。
「んんっ…、ん」
こんな声…他の誰にも聞かせてなんかあげない。
俺しか、知らなくていい。