第24章 満月と狼と(徳川家康/甘々)
唇を離すと、そこにはもう熱を帯びて潤んだ迦羅の目。
俺だけを見てる。
本当はわかってる。
信長様とだって何もないこと。
わかってるけど、何故か止まらなかった。
「それとも、こういうこととか」
今度はきちんと閉じられた着物の襟元から半ば強引に手を滑り込ませ、柔らかな肌と膨らみに這わせる。
「あぁっ…、い、家康…」
相変わらず敏感で素直な反応。
愛しくてたまらない。
さっきよりも染まった頬に、優しく口付けを落とす。
与える刺激に反応して甘い吐息を漏らしながら、迦羅が言葉を紡ぐ。
「信長、様とは本当に、囲碁…だけだよ」
「うん」
「私には…家康だけ、だから」
「うん」
素っ気ない返事をしながら、空いている手を帯びにかける。
何の抵抗をされることもなく、しゅるりと帯は解けた。
すると、すっと迦羅の小さな掌が俺の頬に当てられる。
「私…家康としか…こういうことしないよ?」
真っ直ぐで疑いようのない俺への言葉ー。
頭ではわかってるはずなのに、ちょっとしたことでやきもちを妬く程には、迦羅に惚れてるんだよ。
そんな俺を、嫌いにならないで。
「うん。知ってる」
多分、そう答えた俺の顔には、やきもち妬いてますって書いてあったんだと思う。
「もう…家康の意地悪」
迦羅は怒るでもなく、してやられたと言うように微笑んだ。
「それも、知ってる」
脱がせかけの着物をそのままにして、堪らなく愛しい迦羅の身体をぎゅっと抱きしめた。
開け放たれた障子窓からは、薄い月灯りが差し込む。
幾度となく口付けを繰り返す二人の身体は、夜気に晒されることも気に留めない程に熱を上げていた。
ゆっくりと迦羅の身体を布団に押し倒す。
「今日は何の日か知ってる?」
「え?」
迦羅は首を傾げた。
「満月の夜は、俺だって、狼になるんだよ」
一瞬目を瞬かせた迦羅だったけど、くすくすと笑い出す。
そして恥ずかしそうにしながら言った。
「じゃあ私は…狼に食べられちゃう羊だね」
そんな迦羅が可愛くて仕方なくて、俺の中の愛してるを全部伝えたくて…
何度も何度も、俺は迦羅の中に深く身を沈めていった。
完