第23章 何度でも君に(伊達政宗/甘め)
暖かな陽気の中、政宗の馬に乗せられてやってきたのは、穏やかな時間が流れるような小川の畔だった。
政宗と一緒に大きめの岩に腰掛けて、その景色を見る。
川辺は小さな草花に埋め尽くされている。
川の向こうには、散り始めてはいるけれど幾本も連なった大きな染井吉野。
「わぁー!すごく綺麗な所だね!」
「気に入ったか?」
頬杖をつきながら、政宗は満足そうに笑っている。
安土城でも桜は見てきたけど、此処も大好きになりそう。
「ありがとう、政宗」
「いつでも連れて来てやるよ」
片腕で頭を抱き寄せられ、肩にもたれかかる。
いつも強引だけど…そんな政宗と一緒に見る世界はいつだって大好きになる。
一緒にいるのが政宗じゃなかったら、きっとそうはならないのかもしれない。
同じ気持ちでいてくれたらいいな。
「なぁ、迦羅」
「ん?」
「俺はお前と見る景色が好きだ」
「えっ?」
それって…私と同じこと思ってくれてるんだ。
「お前が好きなものは俺も好きだ。俺の好きなものは、お前も好きだろ?」
わかってると言わんばかりの言い方だけど、当たってる。
「当たり前でしょ。私は政宗の恋人なんだから」
「………」
あれ?
返事がない。
不安になって隣を見上げると、視線を向こうに投げながら真っ赤になっている政宗の顔。
ふふっ、私をからかう時はこんな顔しないのに。
「ねぇ、何とか言ってよ…」
拗ねたふりして着物の袖を引っ張る。
政宗はこちらを向くことなくそのままで口を開いた。
「…不意打ちで言うのやめろって」
いつもの俺様がたまに何処かへ行ってしまうみたい。
これも、私しか知らない政宗だったらいいな。
そうやって照れている姿を見ていたら、自分でもどうすることも出来ない愛しさが込み上げてくる。
すっと手を伸ばして、こっちを見ない顔を引き寄せた。
それでも目を合わせようとしない政宗。
悔しいけど、何だか可愛い…。
私はそのまま…目の前の愛しい人に口付けていた。