第19章 蜜色の戦(上杉謙信/甘め)
迦羅、無事に安土へ着いたか
迦羅、男共に触れられてはいないか
迦羅、俺のことを考えているか
迦羅、一刻も早く帰って来い
「迦羅—」
「なぁ、さっきから心の声がダダ漏れなんだよ」
幸村が佐助にそっと告げた。
「ああ、自覚はないようだね」
「さすがに迦羅だな。謙信をこんなにしてしまうとは」
信玄も参ったように笑っている。
ふと、三人の視線に気付いた。
「何を見ている」
「いえ、気になさらずに」
しれっと答える佐助を見て、気を紛らわそうと考える。
「佐助、付き合え」
「…あ、急用を思い出しました」
「ここで戦を始めるぞ」
「おい佐助!黙って付き合ってやれって!」
「いい心掛けだ幸村。お前もだ」
逃げ出す二人を追いかけ回して捕まえ、散々と鍛錬に付き合わせた。
しかしそれが終わってしまえば、心の中は再び迦羅で埋め尽くされた。
離れているのが辛いのは、俺だけなのか。
今頃迦羅は安土で連中と楽しく過ごしているのか。
これ程までに強い独占欲と嫉妬深さが、俺自身を苦しめていることは最早承知の上。だが、どうにもならん。
夜も更けて布団に入るが、眠気は一向にやって来ない。
毎晩のように温かな夢へと誘う迦羅は居ない。
寂しさに眠れぬとは…困ったものだ。