第19章 蜜色の戦(上杉謙信/甘め)
迦羅が安土へ経ってから三日、ひどく長い時間が過ぎたような気がする。
長居はするなと注意したはずだ。
であればそろそろ戻って来てもおかしくはない。
気が落ち着かず城の中をウロウロ歩きまわる。
佐助は今朝から姿が見えず、鍛錬も出来ない。
大人気ないとは思うが、待つというのはこんなにも心苦しいものなのか。
夕刻になり、ふらりと城門まで出てみる。
するとそこに、迦羅を連れた佐助の姿があった。
「戻りました」
「謙信様!」
満面の笑みで飛びついて来た迦羅を受け止め、数日感じられなかった愛しい温もりを確かめた。
「よくも待たせてくれたな」
「ごめんなさい」
いや許さん。
軽々と身体を抱き上げ中へ入り、誰の目も気にせず、部屋へ直行する。
すぐに迦羅を敷きっぱなしだった布団に下ろして帯を解き、押し倒す。
我ながら無駄のない一連の挙動に感心する。
「あ、あのっ…怒っているんですか?」
堪らずその唇を塞ぐ。数日分だ。
「んっ…、…ぁ」
漏れ聞こえる声に刺激されると、ますます深く口付けた。
はだけた襟元から手を滑り込ませて胸元を包む。
「あぁ…や、謙信様ぁ」
手を止めることなく首筋に唇を落としていく。
「俺がどれだけ寂しい思いをしたかわかっているのか」
「わ、私も、謙信様と離れてみたら…とても、寂しかった」
では二度と安土へは行かせられんな。
互いが寂しい思いをしてまで、連中に義理立てしてやる必要はない。
「俺は戦で負ける気はない。だが—」
今回のことでわかったのだ。
「お前相手の戦では勝てる気がしない」
迦羅はふふっと満足そうに笑うと、自ら俺の頭を引き寄せて、甘くて優しい口付けをした。
布団の上であれば、迦羅相手の負け戦も悪くない、か。
完