第19章 蜜色の戦(上杉謙信/甘め)
さて、迦羅が安土へ行くことを文で送り、責任を持って迎えを寄越せという条件をつけた。
佐助あたりに送らせたほうが安全かもしれんが、迎えに来たところで嫌味のひとつも言ってやろうと思ったのだ。
恐らくは誰か武将がやってくるだろうからな。
ふん、面白くない。
安土から迎えの者がやってきたのは二日後のことだった。
広間に通されたのは、物腰の柔らかな優男だ。
石田三成、か。
「文を頂き、迦羅様のお迎えにあがりました」
丁寧に頭を下げ、微笑んでいる。
「武将自らすぐに飛んでくるとは、余程暇なようだな」
「迦羅様のお迎えとあれば暇は作りましょう」
この男も、油断出来んな。
そこへ支度を終えた迦羅がやってくる。
「三成くん!」
久方ぶりの再会に、迦羅の顔はパッと綻ぶ。
「お久しぶりですね、元気そうで何よりです」
二人の間に漂う穏やかな空気に、妙な苛立ちが募る。
「迦羅、言っておくが長居することは許さんぞ」
「わかっています。安心して下さい」
そして城門まで二人を見送りに出た。
三成は自分の馬に迦羅を乗せて、その身体は密着している。
「それでは、行って参ります」
迦羅は何とも感じていないように俺に笑顔を向ける。
俺は気が狂いそうだ。
無意識に刀の柄に手をかけそうになると、横から佐助がそれを制する。
「迦羅さん、気をつけて」
はらわたの煮えくり返っている俺に代わり、佐助が声をかけ、二人は春日山城をあとにした。
二人の姿が見えなくなると、より一層俺の胸は騒いだ。