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【イケメン戦国】✿ 永遠の恋〜華〜 ✿

第18章 魔王の誓い(織田信長/悲甘)



天主への廊下から、パタパタと走る足音が聞こえる。
また何か厄介事か。

「あのっ、信長様!」

息を切らした迦羅の声だ。慌てて襖を開けてやる。
「こんな時間にすみません。少しお話ししても?」
真剣な表情に押され頷く。いや、迦羅の訪問に喜んでいるのだ。


月灯りの射す縁へと誘い、久しぶりに二人で座る。
こんなに慌てて来るとは、何か思い出しー

考えを巡らせていると、突然目の前が迦羅の身体で塞がれた。胡座をかく俺を、膝立ちになった迦羅が正面から思い切り抱き締めている。

「…信長様」
「少々苦しいが」
迦羅は聞いているのかいないのか、抱き締める力を緩めようとはしない。
そして俺の髪に顔を埋めてひと息ついた。
「愛しています、信長様」

!!?

戸惑いなどない澄んだ声が、どこまでも深く刺さった。
咄嗟に迦羅の身体を掴んで引き離し、その顔を覗き込む。
しばらくの間見ることのなかった顔があった。
恥じらい、照れを含んで染まった頬、花がほころんだような笑顔ー。
「俺を、思い出したのか?」
「はい。私の、愛しい人…」

言いたいことは山ほどある。謝らなければならないこともたくさんある。俺が貴様をこんな目に遭わせたのだから。

「迦羅、悪かった。俺が…」
言いかけると、不意にその唇を塞がれる。
柔らかな唇が俺の言葉を制した。

「私は、怪我をした時のことは覚えていません」
何も言うなとばかりに真剣な眼差しで俺を見据える。
「だが俺はー」
今度はパシッ!と両手で頬を叩かれる。
「それ以上言ったら、信長様なんて捨ててしまいます」
「この俺を捨てるだと?」
「はい。秀吉さんあたりに乗り換えますからね!」
唇を尖らせてムキになっている。

だが、本当にそうされては敵わぬ。
俺があの日のことをどう考えているのかすべてわかっているのだろう。その上で、敢えて何も聞きたくないと、覚えていないなどと嘘をついている。


あんな傷を負っただけでなく、俺の心すら救おうとしているのか…
これ以上、口には出来んな。
心の中で何度も何度も悪かったとくり返す。

「俺を捨てるな。貴様がいなければ、俺は生きてはいけない」
「私だって…同じです」

まだ迦羅の傷は癒えてはいない。
この日は、互いの気の済むまで、口付けに溺れた。

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