第18章 魔王の誓い(織田信長/悲甘)
部屋には、痛みと熱で荒くなった迦羅の呼吸だけが聞こえていた。
城へ戻り着いてすぐ、安土で一番医術に優れていると呼ばれる者を呼びつけ迦羅の容態を診させた。
刀傷は思ったより深く、それが原因で高熱を出し始めている。
家康の応急処置のお陰で幾分助かったようだが。
未だ目は覚まさない。
迦羅の手をしっかりと握りしめ、俺は後悔と自責の念に胸が潰されそうになっている。
「俺は…約束を守れなかった」
何事があろうと、俺は必ず守ると約束したはずだ。
何も案ずるなと、言ってやったはずだ。
だが…俺の手では、この女一人守ってやれないのか…
俺は、己を過信していたに過ぎないのか。
この女は、俺と出逢ってしまったことで、このような運命を背負わなければならなかったのか…
次々と湧いては締め付ける責念が後を絶たない。
だが今は、目の前で傷付いている迦羅の目が覚めるその時を、ただ祈るしかなかった。