第18章 魔王の誓い(織田信長/悲甘)
「傷を確認しますから横になって下さい」
「ああ、すまない…」
「こんなに出血を…大変でしたね」
声をかけながら、血塗れの胸当てを外し、着物をめくる。
え?
こんなに血が付いてるのに、肩にも、胸にも、何処にも斬られた傷がない。どういうこと…?
思わず顔を見ると、ニヤリ、と不気味な笑みを浮かべている。
…まさか、罠だったの!?
そう思った時、男は勢いよく起き上がり片手で私の口を塞ぐと、私のお腹のあたりには鋭い刃を突き付けられた。着物越しとはいえ、刀であることは良くわかる。
「顕如殿から、女をさらって来いと言われたんだが…」
小さな声で語りだす。
「すぐそこに信長がいるとあれば、話は変わってくるよなぁ」
まさか…この人は自ら信長様の命を狙うつもりなの!?
「邪魔はするな。女の命など要らぬ」
そう言うと私を立たせ、その背後から刀を突き付ける。
刀を向けられている恐怖はまだあるけれど、信長様に手を出させるわけにはいかない…!
口に当てられていた掌を力一杯に噛みつき、男が隙を見せた瞬間に走り出した。信長様に知らせなきゃ!
すぐ後ろから男が追ってくる。
本陣手前で小さく信長様の背中が見えたー
「信長様っ、逃げてー!!」
その声に信長様は振り向いた。
「っ迦羅!」
異変に気付いたか、すかさず刀を抜きこちらへ駈け出す。
しかし次の瞬間すぐ後ろに迫っていた男が叫んだ。
「邪魔するなと言ったはずだ、女ぁぁ!!」
「く、その女に手を出すなー!!」
「信長様っ…」
走りながら必死に手を伸ばすが、私の背後から刀を振りかざした男は躊躇いなくその背中に刃を振り下ろしたー。
「迦羅っ!…迦羅ー!!!」