第18章 魔王の誓い(織田信長/悲甘)
信長率いる織田軍が安土へと帰還したのは、城を出発してからおよそ半月程経った頃だった。
合戦にて十数名の重傷者を出したが、戻った軍はほぼそのままを保っていた。無論、武将達は傷一つない。
疲弊した兵達をそれぞれの家へ帰し、
傷を負った者は手厚く看護した。
城門にて、出迎えた迦羅と軽くやり取りをしたが、合戦の報告や留守中の報告、東国の動向など確認を取るためすぐに武将達と広間に籠る。
「西国での此度の謀反、東国のそれとは無関係なものだった」
同行していた秀吉が、政宗、光秀、三成に話す。
「すると、それぞれが謀反を企てたのがたまたま重なったわけか」
「ええ。捕らえた将をいくら問いただしたところで、東国と繋がるものは何一つ出てきませんでしたから」
「で、そっちはどうなっている」
「まだ、ですね。規模にすれば西国と違わぬようですが、未だに討って出てくる気配はありません」
あれ以来動きを見せない東国は、何をそんなにモタモタしているのだ。
余程の策を練っているのか
まだ進軍出来ない理由があるのか
それとも謀反自体が偽りであったか…
何にせよ、西国の謀反を制したことで怖じ気づくかもしれん。
今は兵も疲弊している。
それならそれで構わんが、なにか妙だ。
「光秀、貴様の手下からの連絡はないのか」
「有益なものは何も」
残念ながら、といったふうに首を横に振る。
「まあ良い。先方が動かぬ限り手出しする気はない」
「では引き続き動向を探らせます」
「今日は終いだ。皆大義であった」