第2章 棘のある病(徳川家康/微甘)
迦羅が政宗さんの所へ行くと言って、あれからどの位経っただろう。
部屋で三成と書物に目を通しているが、何だか気が気でない。
でも、帰ってきたからと言って、わざわざ俺に報告に来るわけでもないし、もう部屋に居るかもしれない。
ふとそんな事を思い立ち上がる。
三成は書物に夢中だし、少し様子を見に行ってみよう。
迦羅の部屋の前に来たが、灯りはない。
やはりまだ帰っていないのか…。
念のため声をかけてみたが返事はなかった。
何だかもやもやした嫌な気持ちが胸に広がる。
一旦三成の所へ戻ると、三成が書物から目をあげた。
「迦羅様はまだ戻られないのですか?」
珍しく察しが良く、心配そうな顔をしている。
…俺だって
あんなに面倒だと思っていたのに
俺には関係ないと思っていたのに
今では姿が見えないと心配で堪らない。
「私が様子を見に行きましょう」
「余計なお世話」
心配する三成をそう切り捨て、俺は踵を返し部屋を出た。
一応秀吉さんに迦羅のことを話し、政宗さんの御殿へ行ってみることを告げた。
「そうか、頼んだぞ」
秀吉さんもたいそう心配な様子だ。
それは迦羅がただ女の子だからってわけじゃない。
あの子が本当に皆に愛されているからなんだ。
今までそれがわからなかったわけじゃない。
きっと俺は…
そうやって皆の心を明るくして…あったかくして…
そして皆に愛されてる迦羅が、俺だけを見てくれないことに拗ねていたんだ。
押し込めていた気持ちが次第に溢れてきて
今度顔を見たら、もっと素直になってみようと強く思い城門を出た。