第17章 絡まる絲(真田幸村/甘め)
しん、と静まり返った広間。
微妙な空気が流れていくのがわかる。
「お、おい佐助!お前っ、何言って…」
「可哀想な話じゃありませんか。愛する女性を安土から呼び寄せたものの、主君らに横取りされて甘い時間さえ共に過ごせない若い二人…このままでは幸村は死んでも死にきれませんよ」
酔いの回った佐助はもはや何を言っているかわからねぇ。
信玄様は肩を震わせながら笑いを堪えている。
すると、顔を見合った謙信様と迦羅がくすくすと二人で笑い始めた。
「謙信様、あとのお酌は佐助くんに任せますね」
「ああ、仕方ない」
迦羅は俺の元へ戻ってきたが、佐助のせいで恥ずかしくてたまんねぇ。あの酔っ払いめ。
一体迦羅は謙信様と何話してたんだよ。
モヤモヤしていると、謙信様がまた口を開いた。
「迦羅、疲れただろう。もう戻れ」
「はい。今日はありがとうございました」
「…幸村、お前もだ」
居心地の悪い俺にも退席を促した。
「わかりました、先に失礼します」
迦羅の手を取り広間を出る時、背後から追いかけるように謙信様に呼び止められる。
「幸村、あまり妬いてくれるなよ。貴様と戦をする気はない」
そう明言され、やきもちを妬いている自分が更に恥ずかしくなり、礼をして足早に広間を出る。
何だよ。
てっきり迦羅を口説いてでもいるもんだと思ったじゃねーか。信玄様ならまだしも、謙信様にまで茶化されるなんて…
「幸村?ごめんね、戻るのが遅くなって…」
黙っている俺に不安を感じたのか、迦羅が申し訳なさそうに言葉をかける。
熱くなって赤らんでいる顔を見せられなくて、迦羅の手を引いたまま振り返らずに部屋まで戻った。