第17章 絡まる絲(真田幸村/甘め)
迦羅の部屋の縁側で、俺と迦羅、佐助に信玄様、四人で茶を飲む。陽射しは暖かく、いい日だ。
「しかし、安土の奴らは良く承諾したな。君をここへ寄越すことを」
「そうですね、まぁ色々ありましたけど」
何かを思い出すように迦羅は笑っている。
「でも、ちゃんと私の意志を尊重してくれました」
「そうか。それだけ愛されてるんだな君は」
言いながらも信玄様の顔は次第に迦羅に近付いていく…
「そういうのやめてもらえますか」
俺は信玄様の額をぐーっと押し返した。
「迦羅は俺のなんで」
素直に口をついた言葉に、隣で迦羅が頬を染めた。
それを見て俺も急に恥ずかしくなる。
「お前っ、そういう顔するんじゃねーよ」
「だって幸村が…」
そんな俺達を、信玄様は嬉しそうにも不満そうにも見ている。
「…幸も男になったな」
「ええ、シビれるくらいいい男ですね」
無表情のまま佐助まで頷く。
するとそこへ、謙信様がやって来た。
「お前達、今宵は宴だ」
「宴?」
「迦羅がここへ来た。その祝いだ」
皆キョトンとする。
謙信様は何かにつけて酒を呑みたがるが、まさか迦羅のために自ら宴席を開くなどと思っていなかったからだ。
「ありがとうございます」
迦羅が素直に礼を告げると、謙信様はまたふっと表情を和らげて迦羅を見つめる。
が、すぐに視線を佐助に向けた。
「おい佐助、祝いの鍛錬だ。行くぞ」
「今日くらいゆっくりしましょうよ」
「そうだな、まだ陽が高い。ゆっくり鍛錬できる」
「…そうじゃなくて」
「文句があるか?斬り捨てるぞ」
そんなやり取りをしたあと、佐助は渋々謙信様と鍛錬場へ向かった。
しかし、謙信様の様子が気になる。
迦羅を見るあの優しい目…。まさかとは思うが…。
「おかしなことになってきたな」
愉快そうに笑う信玄様も、俺と同じことを考えているのか?
「幸、油断するなよ」
そう言ってるあんたの手は何なんだよ。
今にも迦羅の肩を抱こうと伸びている。
すかさず逆から迦羅の肩を抱き寄せる。
「お前、気をつけろよな。あぶねぇから」
「う、うん、わかった」
それぞれ赤くなって寄り添う二人。
「初々しいねぇ」
信玄は目を細めて眺めていた。