第5章 暗黙のルール(マルコ)
「お前も初めてか……こいつには酒をあんまり飲ませねェ方がいいかもな」
隊長クラスなら大丈夫だろうが下っ端と飲むとなると少々心配だ、問題が起きてからじゃ遅いのだ。
…そういや何時もより酔うのも早かったが…何か関係あんのか?
マルコは頭を悩ませるがそれらしき理由に見当が付かない…やっと終えたついさっきの仕事よりこっちの方が骨が折れそうだった。
「まァ、暫くは様子見でもいいんじゃねェか…俺もそれとなく協力するからよ」
サッチの言葉にマルコはそれもそうだなと視線を落とした。
人の気も知らないで自分の腕の中で気持ち良さそうに眠るユナを見てマルコは肩を竦めたのだった。
「そーいやこいつ、一週間食べてないって言ってたがお前知ってたかよい?」
「はァ⁉︎ 一週間⁉︎ ……マジで?」
食堂を後にした二人はユナの部屋へと足を向けていた。マルコの言葉に驚いたサッチの大声でも起きないくらいユナは今、マルコの腕の中で熟睡している。
「…オレが知ってるのはここ二日だったからなァ、てっきり食べてるもんだと…」
流石に自分が非番の日までは把握してなかったがまさか一週間も食べてなかったとは。
「それで? 異常はねェのか?」
サッチの言葉にマルコは考える素振りを見せるがこれと言ってユナに異常は見られなかった。いつも通りだったし痩せ我慢してたとも思えない。
だが一応ナースに診せるに越した事はないだろう。明日朝一でナースを呼ぶ事で今日は解散する事にした。
──……
『〜〜っ……出来ればもう少し…ボリュームを、落として貰えると…ありがたいです…』
ベッドの上で両耳を塞ぎ、弱々しくも抗議の声を上げる少女。
マルコとサッチは壁に背を預け、目の前のそんな少女を眺めていた。
──昨日から一夜明け、マルコとサッチはナースを連れユナの部屋へと訪れれば、ユナが床で蹲っていたのだ。
直ぐさまナースが診察をすれば、ただの二日酔い以外異常はないと言われた。
床で蹲っていたのは部屋を出ようとしたが酷い頭痛で歩けなかったとの事だった。