第5章 暗黙のルール(マルコ)
「せめて食堂に来ればいいんだけどなァ…姫さん出した料理はちゃんと食うからよ…」
サッチの言葉にマルコはそれだと閃いた。
ユナが自ら来ないのなら連れて来ればいいだけの話だ。
「"飯時は誰かが必ずあいつを食堂に連れて来る"…食堂にさえ来れば飯は食うだろい」
「成る程、それ名案だな」
──今日また一つ、ユナが知らない白ひげ海賊団の”暗黙のルール”が追加された。
「じゃあ俺は他の奴等に言っとくわ。マルコは姫さんのとこ行くだろ?」
「あァ、頼むよい」
了承の変わりにサッチはヒラヒラと手を振って去って行った。
それを確認してからマルコも踵を返す。
恐らくユナは今日一日まともに動けないだろう、だがあんな状態でも無理をするのがユナだ。ほっとけば「大丈夫、問題ない」と言って何かしら手伝いに行くのは目に見えている。
サッチもそれを分かった上で伝言を引き受けてくれたのだ。
今回の件は自分にも責任がある、ユナに無理はさせられない。
今日は監視がてらあいつの部屋で仕事でもするかよい。
そんな事を考えながらユナの部屋へ向かったマルコが、予想通りの事態に頭を抱えるのは時間の問題だった──。
fin.