第5章 暗黙のルール(マルコ)
ユナは見たところ何処にでもいるような小柄なガキだ…親父の命令の真意は分からないがこれだけの男所帯で女に、しかもガキに船や仲間を任せられるかと、当時その船長命令に異論を唱える者はいなかった。
初めの内はユナは全ての事に無関心だった為問題無かったが、打ち解けるにつれて次第に戦闘にも参加しようとするユナを邪魔だの引っ込んでいろだの、仲間が怒鳴っていた場面がいくつかあった。
ユナは船長命令を知らない、本人には言わないのかと親父に聞いた事があるが、言った所でユナは言う事を聞かないだろうと…親父はどこか寂しげに言っていたのを今でも覚えている。
親父が言うつもりが無いのならユナには黙っておくべきだろう…だからユナを戦闘には参加させないというのは”暗黙のルール”になっている。
「あー、なンつーか別に気にしなくてもいいだろい、この船に乗ってる奴等はみんなそんなヤワじゃねェんだ…任せとけばいいよい」
『…それじゃいやなの! わたしだってたたかえるもんっ』
勢い良く顔を上げたユナは紅潮した頬を膨らませながらマルコを睨んだ。
「まぁ…今の状態で言われてもお前が戦えるなんて誰も思わないだろい」
『あー、マルコひどーい! ひとはみかけではんだんしちゃダメなんだぁ』
ダメなんだぁって…今のユナでは説得力が皆無だろい。
明らかに呆れた顔のマルコを見たユナは再び頬を膨らました。
何とかマルコを見返す方法は無いだろうか…私だって戦える事を証明出来たらこれからは戦闘に参加出来るかもしれないし…。
暫く唸っていたユナだったが何か閃いたのか、だったらと人差し指を立てた。
『こんどてあわせしてよ、わたしがたたかえるってこと、しょうめいするから! うん、きまり!』
「いや…ちょっと待つよい」
『だめ、またない、もうきまったんだから』
「おれは了承してないよい」
『ブッブー、マルコにきょひけんはありませーん、もうけっていじこうでーす』