第5章 暗黙のルール(マルコ)
この船に家族をそんな目で見る奴はいないと思いたいがみんな男だ、注意するに越した事は無いだろう。
「せめてズボンは履けよい」
『ズボンは寝苦しいから嫌よ』
「だから部屋から出る時の話だよい」
『えー、メンドくさいわ』
これまた決まり文句にマルコは頭を抱えた。
何度ズボンを履けと言ってもユナはメンドくさいの一言で終わらせてしまう。
百歩譲って昼間はいいとして夜はちゃんとしてくれと何度言い聞かしても聞きゃしない、最もこんな格好をするのは寝る時限定なのだが。
別に寝る時の格好をとやかく言うつもりは無いが部屋から出る時は考えて欲しいものだ、その理由も言った事はあったが「大丈夫よ」の一言で片付けられた。
仲間が信用されてるのは喜ばしい事だがユナにはもう少し危機管理能力が必要だ。
「はァ〜、ワンピースは着ねェ癖になんでそんな格好はするのか理解に苦しむよい」
そう、ユナはワンピースは嫌がる癖にシャツ一枚はokなのだ。
ユナ曰く、スカートのヒラヒラが嫌いらしい。下着が見えるからとかじゃなくそんな理由で着たがらないのだ…男の俺にはその感覚が分からないが、せめて恥じらいを持てと言いたいところだ。
『マルコ溜息ばっか吐いてると幸せ逃げちゃうわよ』
「…誰のせいだと思ってるんだよい」
若干睨みを利かせて言えばユナはあははと笑った。
「で、何でこんな時間に彷徨いてるんだよい」
『んー、ちょっと風に当たろうかなって』
笑って言うユナにマルコは何かを察すると、だったらと一つ提案を持ち掛ける。
「一杯付き合ってくれよい」
『今から?』
「ああ」
『別にいいけど…マルコどっかに行く途中じゃなかったの?』
こんな時間に出歩くなんて用事が無い限り無いだろう。
「まァおれのは大した事ねェから気にするなよい」
『…そうなの?』
「ああ」
ほら行くぞいとマルコに促されユナはマルコの後を追ったのだった。