第4章 ☆依存する程に(エース)
月が輝く夜空の下、エースは甲板に出て一人暗い海を眺める。
島の方は所々明かりが灯り夜の街の賑わいを見せていたが今は何となく海を眺めていたかった。
白ひげの船モビー・ディック号は今、とある島の海岸に碇泊している。
だが明日の朝には出発予定だ、島での最後の夜という事もあり仲間の大半は島へと出掛けている。その為船は一層静まり返っていた。
「よォ、エースじゃねぇか」
暫く海を眺めていたエースだったが不意に掛けられた声に振り向けば仲間が数人今から出掛けるのか、甲板にやって来た。
「お前も一緒にどーだ?」
仲間の一人が片手で酒を飲む身振りをする。
「あー、悪りィけど今回はパスで」
「何だよ最後の夜だぜ? 楽しまねェのか」
つまらなそうに言う仲間に隣にいたバンダナを巻いた男が口を挟む。
「まァこいつは俺らと違って何時もベッタリだからな…溜まってねェんだろ」
「あァ…なるほどそれは違いねェ」
「…何のことだ?」
首を傾げるエースに仲間達はやれやれと肩を竦める。
「いーんだエース、お前はそのままでいい」
「そうだ気にすんな」
ポンと肩を叩かれ何故か優しい眼差しを向けてくる仲間にエースは益々首を傾げた。
「そーいや最近ユナと一緒じゃねェけどケンカでもしたのか?」
ユナとエースがいつも一緒にいるのはモビー・ディック号では周知の事実で、特にユナがエースに抱き付いている姿はもう見慣れたものだった。
だからたった二日でも、二人が一緒に居ないだけで仲間内では割と噂になっている。
何気無い仲間の言葉にエースは言葉に詰まった。ユナが治療中なのは親父に口止めされている…それは仲間に余計な心配をかけない為と少しでもユナの能力についての漏洩を防ぐ為。
ユナが医務室にいると知れ渡れば見舞いに行く連中はいるだろう、あんな状態のユナを見たらきっと血の気の多い奴は黙ってはいない。朝にはこの島を出る…最悪それまでは悟られぬよう振舞わなければ。
「あー…と…」
「何だよホントに喧嘩したのか? 何やらかしたか知んねェけどさっさと仲直りしろよ」
「そうだぞエース、どーせお前が悪いんだから早く謝っとけ」