第4章 ☆依存する程に(エース)
何とか気持ちを落ち着かせようとするが、静寂の中、自分の心音とシンクロする無機質な機械音がユナの焦燥を無駄に駆り立てる。
『……っ』
堪らずユナは医療器具を取り外しベッドから飛び出した。
『…わっ』
勢い良く飛び出したのは良いが脚に力が入らず床に盛大にダイブしてしまった。咄嗟に受け身を取ったので顔面からのダイブは回避出来たが、代わりに打ち付けた腕が痛い。
だが今はそんな事に構ってられない、エースの無事を一目見なければこの言い様のない不安は消えないだろう。
ユナは力の入らない脚を叱咤し立ち上がるとフラつきながらも部屋を後にした──。
エースの部屋、食堂、娯楽室、お風呂場。
エースがいそうな場所は全て回ったのにエースどころか誰一人として出会う事はなかった。
いくら真夜中だとしても大多数が乗っているこのモビー・ディック号で人に会わないなんて事は滅多にない。
しかも会わないどころか人の気配すら殆どしない。
壁伝いに寄り掛かりながら歩くユナの足は次第に重さを増す。
どうして誰も居ないんだろう…。
薄暗い中響くのは自分の足音のみ、歩き慣れた、見慣れたはずの通路はまるで何処までも続く闇のようだった。
このまま誰にも会えなかったらどうしよう……次第に視界が足元へと落ちる。
そんな事無いのに暗闇のせいか静けさのせいか、恐らくそのどちらもだろうが今は思う様に動かない体の所為もあって思考は悪くなる一方だった。
──別れはいつも突然だ、今迄そうであったように…。
どんなに願ってもどんなに叫んでも…みんな私を置いて逝く──……。
思わずその場に蹲りそうになる気持ちをユナはグッと堪える。
──あぁダメだ。このままだとまた心が堕ちる…一度頭を冷やそう、夜風に当たれば少しは落ち着くだろう。
ユナは顔を上げると甲板へと足を進めた。