第4章 ☆依存する程に(エース)
──夢を見た。
私を庇って銃弾をくらったエースが、紅い血の海に倒れていく夢。
いくら叫んでもその声はエースに届かず、駆け寄ろうにも何かに掴まれた腕がそれを許さない。
目の前で、手を伸ばせば届く距離で、仲間が…大切な人が傷付いているのに自分はただ見ている事しかできない。
こんな思いはもう二度としたくはないと思っていたのに、その為に強くなろうと決めたのに…私はまた──。
静寂の中カチャリと響く音に目を向ければ何者かが倒れたエースに銃口を向けていた、ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。
いや…もうやめて……
目を見開くユナの瞳には引き金に指を掛ける誰かの手がスローモーションに映し出されている、そして──ユナの意に反して引き金は引かれた──。
いや───っ‼︎
『──っ、ハァハァっ…ハァハァ…ハァ……ハァ……』
飛び起きたユナは必死に酸素を取り入れる、ドドドドと早鐘を打つ心臓は静まる事を知らず見開かれた瞳は焦点が合わない。
『ハァハァハァ…ハァ…ハァ……っ』
どれ程そうしていただろう。
暫く荒い呼吸を繰り返していると不意にピッピッピッピッと機械音が鳴ってる事に気が付いた、徐に視線を向ければそこには心音を伝える機械がひとつ。
その機械から伸びた線を辿れば自分に繋がっている事に気付いた、他にも腕には点滴の管と口には呼吸器。月明かりだけが頼りの薄暗い部屋だったが、酸素を取り入れ少しは冷静になった頭で今自分がいるのは医務室だと分かった。
あぁ、そうだ……私を庇って怪我をしたエースを今度は私が能力を使って治して…。
夢の半分は現実に起こった事、エースが死ぬ事はなかったが何とも夢見が悪過ぎる。
あれからどれ位経ったのか、エースは無事なのか。未だに鳴り続ける機械音は相変わらず早鐘を打つユナの心音を伝えている。
大丈夫、エースの傷は殆ど治したしあの場にはマルコも居たのだ、エースは無事なはず…。
そう自分に言い聞かせるが先程の悪夢が脳裏を離れない。
あれは夢だ、エースは大丈夫。
今この場に居ないのは夜も更けてるせい、きっと自室で寝てるに違いない。