第3章 プレゼント(サンジ)
『──もう! はなしてってば!』
「うわ! なんだ⁉︎」
「ユナちゃん!」
突然自分達を中心に壁の様に発生した風の渦に泥棒男は困惑した。サンジも目の前で発生した爆風に驚きながらも飛ばされない様にその場で踏ん張る。
ユナが起こした風は容赦無く周りのものを巻き込んで吹き飛ばし、市場にいた人々は突然発生した竜巻に我先にと逃げ惑った。
サンジは腕を前にかざして中の様子を伺うがいかんせん風が強過ぎてそれは叶わない。ユナちゃんは無事なのか、逸る気持ちを抑えながらもサンジは竜巻の中心へと足を踏み出した。
竜巻の中ではパニック状態の泥棒男が恐怖のあまり独り頭を抱え蹲っていた、最早ユナを拘束してる余裕も無いだろう。
「な、なんだ⁉︎ 一体何が起こってるんだ⁉︎」
『……おじさん』
「ひっ…、な、なんだよ⁉︎」
蹲る泥棒男にユナは徐に近付くと目線を合わせる為に屈む…そしてキッと目尻を釣り上げた。
『わるいこは…めっ。だよ』
「………は?」
『へんじは?』
「は、はい…?」
人差し指をピシッと立てて言うユナは泥棒男の返事を聞くと満足したのか、よろしいと言いながら立ち上がる。一方の泥棒男はユナの予想外の行動に呆気にとられていた。
「…っ、ユナちゃん!」
『あ、サンジ』
やっとの事で竜巻の中へと入ったサンジはユナの無事を確認すると胸を撫で下ろした。サンジに気付いたユナはパッと表情を変えるとサンジに駆け寄って行く…いつの間にか竜巻は治り崩壊した市場が顔を出していた。
「何がどうなってんだ…! く、クソッ…‼︎」
突然の怪奇現象にあった泥棒男は最早やけくそに地面に落としたナイフを握るとユナ目掛けて駆け出した。
「──ユナちゃん後ろっ!」
『え…?』
ユナが振り向けば既にナイフが眼前まで迫っていた──反射的に目を瞑ったその瞬間、誰かに強く腕を引かれた。