第3章 プレゼント(サンジ)
「…クソッ、あの金髪しつけ──どわっ⁉︎」
後ろを気にしながら走っていた泥棒男は自身の足が絡まり盛大に転がりコケた、あまりのコケっぷりに周りの人は僅かに引いている。
『おじさんだいじょうぶ?』
自分の目の前に転がって来た男にユナは屈んで尋ねた。泥棒男はユナを見たあと後ろを振り返る、もう直ぐそこまでサンジは来ており逃げ切りのは不可能。そう判断すると男はポケットに忍ばせていたナイフを取り出しユナ目掛けて襲い掛かった。
「キャーーー‼︎」
誰かの甲高い悲鳴が響き渡る…その声に人々が振り向き、次第にザワザワと騒ぎ出す。
「ちょっとゴメンよ通してくれ…!」
サンジは人集りを掻き分けて悲鳴のあった方へと進む、前に進むに連れて男の声がハッキリと聞こえてきた。
「…てめェら近付くんじゃねェぞ‼︎ 近付けばこいつの命はねェからなっ‼︎」
「──‼︎」
そこでサンジが目にしたのは、泥棒男に首をホールドされナイフを突きつけられているユナの姿だった。
『あ、サンジ』
「ユナちゃん! ってめェ‼︎ 今すぐその汚ねェ手をどけやがれ‼︎」
「う、うるせェ! 近付くんじゃねェ‼︎」
『おじさんくるしい…』
「うるせェ! てめェは黙ってろ!」
泥棒男はユナを拘束している腕に力を入れる。興奮状態の泥棒男をこれ以上刺激してはユナちゃんが危ない…いつものユナちゃんなら問題無いだろうが、今日はいつもと様子が違った…もしかしたら能力は使えないかもしれない。
サンジはそこまで考えるとどうしたものかと思考を巡らした。
そうしている間にも泥棒男はジリジリと後ずさる、そして大きく一歩後ろに踏み出した時歩幅が合わず体勢を崩したユナの手から紙袋がカランと地面に落ちた。
『あ、まっておじさん! はなして!』
落ちた紙袋に手を伸ばしながらユナが叫ぶが泥棒男は御構い無しにどんどん後ずさって行く。
『おじさんはなして!』
「うるせェ‼︎ 黙ってろ‼︎」
さっきまで大人しかったのにいきなり暴れ出したユナに若干苛立ちながらもこの状況をどう乗り切ろうかと泥棒男は必死に考える…その一方でユナは中々解放してくれない泥棒男に遂に痺れを切らした。