第3章 プレゼント(サンジ)
「あぁもォ無理だ! ユナちゃんが可愛過ぎて直視できねェ‼︎ …これはなんだ…もしかしておれは試されているのか⁉︎、ユナちゃんに男としての力量を試されているのか…⁉︎」
『サンジなにいってるのぉ?』
サンジの言っている言葉の意味が分からずユナは益々首を傾げる。
「仮にそうだとしてもユナちゃんがそんな事をする意味が分かンねェ……ハッ、もしかしてユナちゃん! おれのこと…‼︎」
そこまで口にして顔を上げれば、先程まで側にいたユナの姿が消えていた。
「あ、あれ…? ユナちゃーん?」
消えたユナを探し辺りを見回せば少し離れたところに見知ったオレンジの帽子と栗色の髪を見つけた。ユナがいた事にとりあえず安堵したサンジはユナの元へ行こうと足を踏み出したその時、後方から女性の悲鳴が響いてきた。
「キャー! 泥棒よーッ‼︎ 誰かその人捕まえてー‼︎」
「…クソッ……おい邪魔だァ!どけェ‼︎」
「キャッ…⁉︎」
泥棒と言われた男は市場を行き交う人々を掻き分けながら猛ダッシュで進むと、前方にいた一人の女性を突き飛ばす。押された女性は体勢を崩し地面と激突する寸前で誰かに受け止められた。
「大丈夫ですか? マドモアゼル」
「え…、あ、はい、有難うございます…っ」
間一髪で女性を受け止めたのはサンジだった。女性が無事なのを確認するとサンジは直ぐに走り去った泥棒を追いかける為その場を後にした。
『うーん…どれがいいかなぁ……あ、これにしよ!おじさん、これひとつくださぁい』
数ある商品の中から目に止まった一つを手に取り店のおじさんに渡す、おじさんは慣れた手つきで商品を紙袋に入れるとユナに手渡した。商品を受け取りお金を渡して御礼を言うとユナは踵を返す。
『これでサンジげんきになるかなぁ』
ルンルンと来た道を戻ろうとしたユナだったが何やら前方が騒がしい事に気付く、
何だろうと目を凝らして見てみれば一人の男が何やら慌てた様子でこっちに向かって走って来ていた。
「ハァ、ハァ…クソッ邪魔だ!どけェ‼︎」
「そこのコソ泥待ちやがれ…!」
乱暴に行き交う人を押し退けながら走って来る男とその後ろを追い掛ける様にサンジが人混みを掻き分けて走っていた。