第2章 短編 節分の日(※書き出し)
ハジメ視点
「ふー、やっと泣き止んだか」
夜の巡回をしていたら階段の登り始めの段の隅に座っているイチゴがいた
様子がおかしくて近づいてみれば、死人のように真っ白な顔で目も虚ろにあやしく光をたたえていた
人のあんま来ねえこの場所は夜間は明かりを全くつけない場所だ
懐中電灯片手に見回っていたもんだから、俺の向けたその光が反射したんだろうが、とにかく危ういのは確かだった
懐中電灯の明かりで暗闇の中に白く切り取られたイチゴはそれでも気を抜けば闇に持ってかれそうだった
俺らしくもなく焦って駆け寄ってみれば、イチゴは闇から手を離すように俺に飛び込んできた
途端泣き出してどうしたのかと問えば自分が悪いんだとかいい初めて、俺にはよくわかんなかったが、とにかくここにいつまで居ても仕方がないと思い
イチゴを抱えたまま看守室に連れて行った
ソファに腰を落ち着けたものの、まだ泣き止む様子はない
あの暗い場所にいつからいたのか、そもそも舎房を抜け出して何をしてるんだとか聞きたいことはあったが聞けそうもなかった
身体を起こすと結構滅入ってたのかまだ涙もじんわりとにじみ出てて、ふらつくイチゴが危なっかしくて、再び俺の胸によりかからせた
小さい頃寝付けずにぐずる弟にやってやると魔法みたいにすぐ寝付いたあやし方を思い出しながら頭をなでつつ背を規則的に優しくたたく
すると肩のこわばりが抜けて嗚咽も止んできた
目の前には小さく丸まって俺に身体を預ける子供の頭
最初はクソガキでどうしようもねえバカで、中身が変わってからは混乱もしたが臆病なのは変わりなかった
前は小憎たらしく常に拳を振りかざしていた頭だが今では優しく撫でることしかできなくなった
…こいつは変わろうが変わるまいが根っこは同じなんじゃねーかと思った
1人だとどうでもいいことに頭を悩ませて、1人で抱え込んで
そのくせ普段は周りにそれを気づかせない
そんな危うさがあった
「…何があったか知らんが、あんま抱え込みすぎんなよ」
そう伝えると頭が少しだけ動いた