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【YOI・男主】愚者の贈り物

第2章 第1日目・SP滑走順抽選会


「それでは、抽選を続けます。…勝生勇利さん!」
「は、はいっ」
名前を呼ばれた勇利はぎこちなく椅子から立ち上がると、前へ出る。
「くぅ~、また勇利くんが1番滑走引くのを生で見れるかなあ♪」
「健坊、上位進出者はどんなに早くても後半のラスト2グループからやで」
「じゃあ、21番滑走!」
「縁起でもない事言わないでよ」と内心思いながら、勇利はできるだけ遅い滑走順になるよう願いつつくじを引く。
勇利の次に若干14歳の天才と呼ばれるジュニア選手の抽選を挟んだ後で純の名前が呼ばれると、会場から一瞬どよめきが起こった。
「上林って、確かジュニア時代に勝生と1、2を争ってた…」
「でも、シニアの途中で怪我して強化も外れたんだろ?」
「ここにいるって事は予選は勝ち抜いてきたんだろうけど…これまでロクに公式戦の記録もないし、まあ所詮学生最後の思い出出場ってヤツじゃないか?」
言いたい放題な外野の声を意に介さず、純は優雅な仕草でくじに右手を伸ばした。
結果、最終グループの26番滑走が勇利、その次の27番目に純、南は最終滑走を引き当てた。
「今回も勇利くんの最終グループ1番滑走引いたの、生で見れたとばい。バリかっこよか~」
「えー…」
「うーん。僕、勇利くんの次かあ。プレッシャーやなあ」
そうのんびり呟きながら、純は自分の引いた抽選番号とは1つ違いの選手に視線をやる。
「ゴメンなあ。折角、勝生勇利より自分の方が才能あるて証明するチャンスやったのに、僕が横入りしてしもうて」
28番滑走は、先程勇利に暴言を吐いた選手であった。
東日本ブロックから予選を勝ち抜いてきたその選手は、それなりの技術や才能は持っているのだが、それを鼻にかけたり少々物の道理に対する理解が未熟な所も見られ、それが彼の評判を損ねる要因にもなっていたのだ。
「けど、君の次にはジュニアから参戦しとる期待の新星がおるし、更に最終滑走は健坊や。僕はともかく、勇利くんをはじめ彼ら相手に君がどれほどのモンを見せつけてくれるのか…楽しみやわ」

落ち着き払った声に言い知れぬ凄みを覚えたその選手は、無意識に全身を震わせていた。
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