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【YOI・男主】愚者の贈り物

第9章 最終日EX・愚者の贈り物


南と礼之に両側から詰め寄られて、純は少しだけ困ったような顔をしたが、そんな純の腕を、勇利の手が引いた。
「2人共、まだシーズンは残ってるよ。僕らも純も、大会終わったばかりでまずは休息が必要なんだし」
「それはそうやけど…」
「それに、純との約束は僕が1番先だからね。さあ、これから長谷津まで湯治の旅にご案内♪」
「あ、ずるいです勝生さん!」
背後の抗議も気にせず、勇利は純の手を握ると競技場の出口に向かって歩き始めた。
そんな勇利に連れられながら、純は首だけ動かして真っ白なリンクに視線を送る。
ついこの間までは、永遠に別れを告げなければと思っていた場所。
かつてはリンクに立つ度に、大会が終わったら一切の未練を断ち切るのだとばかり考えていたが、今の純の頭の中では、振付や後進の指導について様々なアイデアが浮かんでくる。
そんな自分を何処か滑稽に感じながらも、純はこれから新たなスケート人生への第一歩を踏み出す事に、この上ない喜びを覚えていた。


【エピローグ・又は新たなプロローグ】

その日。年の瀬の長谷津では、昨日までの晴天とは打って変わった大雪に見舞われていた。
「海辺の町やのに、こんなにようけ積もったりするんやなあ」
「この季節でも、ここまでの積雪は珍しいけどね」
年越しを勇利の実家で共に過ごしていた純は、突然の大雪に目を丸くさせながらも、慣れた様子で雪掻きの手伝いをしていた。
勇利と一緒に駐車場や入口の大まかな除雪を済ませた後は、正面入口は勇利に任せて裏側の従業員通用口にまわる。
心なしか重く感じる雪の塊を掻きながら人が通れるスペースを作っていると、不意に背後から何かを転がす音とそれに紛れて複数人と思しき外国語が聞こえてきた。
(外国のお客さんやろか?生憎の天気やけど…)
入口が判らずにこちらに来てしまったのかと思いつつ、純は振り向きざま彼らに英語で声をかけてみた。
「こっちは、スタッフ専用の入口です。向こう側に看板のかかった正面玄関が…」
しかし、彼らの正体に気付いた瞬間、純の黒い瞳は驚愕とそれ以上の不穏な感情に見開かれていた。


──TO THE NEXT STORY──
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