第6章 なか
「アイリーンからのキスとか生まれてきてよかった…」
シェリーは今にも泣きそうな瞳でアイリーンの肩を掴む。
するとドアがノックされる音がしてシェリーは全身を震わせた。
「お嬢様、少しよろしいでしょうか」
ドア越しにセバスチャンの声が聞こえてアイリーンは返事をしようとしたが、シェリーに口を塞がれて自分のクローゼットへと押し込まれた。
訳も分からずただただ戸惑っているとシェリーがクローゼットの扉を閉める。
「シェリー、なんのつもり?」
「いいから、あたしがいいよって言うまでそこにいて」
それだけ言うとシェリーはドアを開けた。
「おや、シェリー様。もうお越しになられていたのですか」
「ええ、久しぶりね、セバスチャン」
セバスチャンは辺りを見回してアイリーンを探していた。
「お嬢様はどこにいらっしゃいますでしょうか」
「アイリーンならさっきお手洗いに行ったわよ」
シェリーの口から出まかせにセバスチャンはなにか考える仕草を見せると懐中時計を胸元から出して時間を確認した。
ひょいとシェリーが時計を覗き見ると針は2時半をさしていた。
「シェリー様、お嬢様がこちらに戻ってこられたら私は不在だとお伝えしてくださいませんか?」
人当たりのよい笑顔を見せてセバスチャンはシェリーに微笑みかける。
「Of course!(もちろん!)」
満面の笑みと親指を立てるグッドポーズでシェリーはセバスチャンに返事をするとセバスチャンはそそくさと礼を行って部屋から出た。