第6章 なか
「そう?目はあっていると思うのだけれど」
机に手をつき、じりじりと迫ってくるセバスチャンから逃れようとする。アイリーンの黒髪にセバスチャンが触れた。
「今もこうして目を合わせてくれないではありませんか」
「きゃっ!」
机側に寄せていた肩を掴まれ強制的にセバスチャンのほうを向かせられる。
アイリーンは今すぐその場を駆け出したくなったがそれは出来ない。
「理由が、あるんですね?」
セバスチャンの目は凄味を増しており、嘘をつけば食い千切られそうだ。
ーなんでオロオロしてるのかしら。私は飼い主なのよ
アイリーンはセバスチャンのリボンタイを掴み、自分の方へと引き寄せる。勢いよく引き寄せられたセバスチャンは態勢を崩し、大きな音を立てて机に手をつく。
「これで満足?」
目を開いてセバスチャンの奥を覗くようにして見つめる。
セバスチャンは薄く口を伸ばして笑う。ふふっと笑って態勢を整えた。
「結局うやむやにされてしまうのですね」
「…ふん、主人の勝手でしょ」
「さようですね」
リボンタイから手を離すとティーカップを突き出した。